少子高齢化、環境問題、安全安心、中心市街地活性化などそれぞれの地域が抱える問題に対して、多くの地域で、行政、民間企業、市民、NPO、専門家など多様な主体がより”豊かな”地域社会を形成していくために、地域独自の資源を活かしながら、協働してまちづくりに取り組んでいます。このようなまちづくりは、まちを変えていく空間的デザインとあわせて、わたし(たち)とまちとの関係性を変えていく地域デザインが重要となってきます。
これまでの都市・地域計画は行政による規制と誘導によって行われてきましたが、近年それとともにコミュニケーションによる心理的な方策の有効性が示されてきました。たとえば、モビリティ・マネジメントというコミュニケーション型の交通政策による効果が実証されています。このような心理的アプローチによる態度行動変容は、交通政策だけではなく、住民の生活行為全般に拡張することができ、商店街活性化や地域防災、郊外住宅地における住民活動の活性化など多様な分野で期待されています。このようなコミュニケーションを活かした取り組みを通して、統合的な地域政策デザインを目指します。
交通政策での研究例をあげてみましょう。
公共交通の利用促進は、環境的観点、効率的観点、健康的観点、教育的観点から求められています。そのためには公共交通のサービスレベルをあげたり、新しい交通手段を整備してきました。ただそれだけではなく、利用者によき社会を目指して、公共交通を利用促進していく社会的意味を伝えていくこともあわせて実施していくことが必要です。こうした交通政策のアプローチをモビリティ・マネジメントと言います。
地域デザインを実践していくためには、多様な主体が関係し合いながら、地域で実践していくアプローチがますます増えていきます。立場が異なる主体が協力しながら活動していくためには、各主体のパーソナル・ネットワークに着目して、役割分担を定量的に分析し、知見を蓄積していくことが期待されています。そこで、地域活動の支援と実践を通して、市民と市民、市民と専門家がよりよい地域デザインに向けて、共進化していくための担い手の関係性のデザインを目指します。
まちづくり活動は、同じ問題意識を持った人たちとの出会いがきっかけではじまります。ただ、そのような人たちと議論するだけでは、地域や社会に対して影響を与えることはありません。どんなに小さなことでもよいので、何かを外向けに活動を始めることで、その人たちとの間柄が急速に縮まります。学生時代の文化祭や体育祭で盛り上がった経験を思い出せば、共感してもらえるのではないでしょうか。さらに、同じ志をもった人との出会いによって新たな方向性が生まれ、まるで一つの生き物のように躍動し始めます。このようにまちづくり活動を活性化させる秘密は、人との出会いにあります。この人との出会いを分析するツールが社会ネットワーク分析です。